カテゴリー別アーカイブ: 季節の花を愛でる

日本人と漢詩(19)—葛子琴(続)

登金剛山 金剛山に登る 七言律詩
維嶽嶙峋跨二州 維岳いがく 嶙峋りんしゅんとして 二州にまたが
諸天咫尺梵王樓 諸天しょてん 咫尺しせきす 梵王ぼんのうの楼
役仙驅鬼薙開日 役仙やくせん る ぎ開くの日
楠子勤王割拠秋 楠子なんし 王につとめて 割拠かっきょとき
貓路草塡城壘暗 貓路ねこじは 草塡うずめて 城壘じょうるいくら
龍泉烟擁寺門浮 竜泉りゅうせん もやようして 寺門じもん浮ぶ
陳圖靈跡猶何處 陳図ちんと 霊跡れいせき いずれところ
陰壑雲深不可捜 陰壑いんがく 雲ふかくして さがからず
金剛山遠景

6月6日の金剛山クリンソウ山行に因んで、「金剛山」を題材にした、葛子琴の漢詩を掲載する。明和6年(1769年)陰暦4月に、混沌社友は、河内一ツ屋村(現在は松原市)の儒医北村橘庵(1731〜91)の案内で金剛登山をこころみたとあるから、季節はちょうど今頃だったんだろう。参加した社友の吟詠は「那羅延遊草」として編まれたらしいが、葛子琴の一首もその一つ。もちろん、当時は、ケーブルもないし、バス道も登山口までは通じていなかったので、河内松原から徒歩で麓を歩いての山行だったんだろう。維岳は、名詞に冠して改まった感じを出す。嶙峋は山が険しい様子。二州に跨るとは、河内と大和にまたがっている、下記参考図書には紀伊とあるが、そのころ金剛山とは岩湧山など和泉山脈を含めた総称だったのかもしれない。諸天、梵王は山岳信仰の山であることを示す。その神が咫尺、間近に存在すると詠う。現在も山頂には神仏混淆的な寺院と神社が混在する。役仙は役行者、金剛山開闢の伝説がある。楠子は、楠木正成だけではなく、彼の一族、貓路には砦が、竜泉山には城塁を築いて、北朝方に抵抗した。竜泉山頂には、近年まで、国保の保養施設があったが、その建物の裏に史跡碑が立っていた。陳図・霊跡は古い領地とミステリアスな遺跡は今は探す当てもないと詠嘆するが、今以上に麓を歩く時間が長く、それらのレジェンドを聞く時間はたっぷりあった故だろう。陰壑は谷の北側、金剛山には、雲がかかっているとその意を強調する。

頂上から見た正面登山道

推定であるが、葛子琴一行は、やはりこの正面登山道を登ってきたのではなかろうか?今から245年前のことである。もちろん、葛子琴に和して漢詩を作れるわけはないが、若干の詩興は湧いてくるのはなぜだろうか?
6月6日の金剛山クリンソウ山行の写真(アルバム)は、Facebook に掲載した。

【参考図書】江戸詩人選集第6巻「葛子琴 中島棕隠」(岩波書店)


立山に咲く黒百合は呪花

あんまり、こどもの日に似つかわしくないタイトルだが、以下、昨日の黒百合がらみで、泉鏡花の小説の感想めいた旧文を引っ張りだした。
 
「黒百合は恋の花、愛する人に捧げれば、二人はいつかは結びつく」という「君の名は」で使われた「黒百合の花」は、アイヌの伝説に拠る。

土地の口碑こうひ、伝うる処に因れば、総曲輪のかのえのきは、稗史はいしが語る、佐々成政さっさなりまさがその愛妾あいしょう、早百合を枝に懸けて惨殺した、三百年の老樹おいきの由。

黒百合

こういう書き出しで始まる鏡花の「黒百合」(青空文庫で公開されている)の舞台は、越中富山市内と立山山麓。佐々成政は、冬のザラ峠(立山と五色ヶ原の間にある鞍部、小説中、「黒百合」が咲いているとされた、「湯の口」の旧立山温泉を経由し登ってゆく。現在この道は廃道になっている。峠のむこうがわの道には、平の渡し小屋が現存している。)を越え徳川家康に援軍を乞いに行った事で有名な戦国武将。早百合は、その遠征中に密通の疑いをかけられ「もし、立山に黒百合の花が咲いたら、佐々家は滅亡するであろう」との予言を残し、無念のうちに死んでいった。言葉通り、後に成政は、豊臣秀吉により肥後一国を与えられたが、国人の反乱に会い、その責任で切腹させられた。その時、立山には黒百合が咲いていたと言う。そんなバックグラウンドで、黒百合の花は、否が応でもそのミステリアスな雰囲気をかもし出す。
その花を知事令嬢のふとした気まぐれから、花売りの娘お雪ら、探し出す登場人物たち。お雪の周りは、悪人ばかり、あの人までもが…「勧善懲悪」ならメデタシメデタシなのだが、鏡花はそんな筋立てにくみせず、一種の悪漢ピカレスク小説ロマンとして組み立てている。
若い頃、立山で、夏のバイトとして、山岳診療所を手伝うかたわら、ザラ峠から南に行った五色ヶ原で、ゴミを捨てる穴掘りをしていた。(現在は、山のゴミは必ず、下界へ降ろすことになっている。)そこは立山でも有数の黒百合群生地であると聞いたが、なかなか見つからず、群生とはいかず、岩陰いわかげひそかに咲く、黒百合を見ただけだった。作品中にあるように、色は黒というより、濃い紫の花である。真っ黒な色を、早百合やお雪さんの白さで少し和らげたせいかもしれない。最近は、鉢植えの黒百合も見かけられるようになった。

2005年4月16日記


庭の花四題(後)

    黒百合

  • その(三)黒百合
庭に黒百合が花をつけた。数年前に連れ合いが球根を植えたらしいが、花が咲くとは思えなかった。もう三十年以上前になるが、立山の五色ヶ原で出会ったのが、最初だった。決して目立つ花ではなく、どこか岩陰にひっそりと咲く寂しげな印象だったことを覚えている。
先日、NHKBS で映画「君の名は(第一部)」を観た。残念ながら、第二部は録画できなかったが、映画好きの母が、北海道観光案内ともいうべき第二部を観たらしく、主題歌の「黒百合の歌」を好んでいた。中学生になった頃、急に思い立って、そのロケ地で、憧れの観光スポット、美幌峠まで連れてゆかれた。当方は、思春期に差し掛かる時なので、母との旅行は、正直気が向かなかったが、Youtubeの動画にあるように、「映画では、佐田啓二演じる後宮春樹はここを馬車で通ったんよ」と言っていたことを思い出す。

Youtubeでの黒百合の歌

FB友によると、石川県の郷土の花として指定されているとのこと。もう一度、白山にも黒百合を見にゆきたいと思っている。
  • その(四)クリスマスローズ

クリスマスローズ

花が似ていると、FB でコメントをいただいた黒百合の後ろにクリスマスローズも咲いていた。Wikipedia によるとヘレボルス(Helleborus)と呼ぶそうで、多くの品種があるようだ。また、「花に見える部分は植物学上では「花」ではなく「がく片」という部分である。そのため「鑑賞期間」が比較的長い。」そういえば、クリスマス頃からずっと「花」をつけていたわけだ。我が家のローズは、どの品種に当たるのだろうか?
あす、5月5日の泊原発停止で、日本のすべての原発がストップするのを待ちかねたように、花々は咲き誇っていた。

庭の花四題(前)

  • その(一)エビネランとシクラメン

シクラメンとエビネラン

数年ぶりにたくさんの花をつけたシクラメンも見事だが、その前にあるのが、エビネの花。蘭科の植物で、野生のは準絶滅危惧種だそうだ。(Wikipedia)蘭科だけあって、清楚だが、気品高い?
  • その(二)クレマチス

クレマチス

毎年、一つか二つ、花をつけるようだ。クレマチスにちなんで、以前書いた文章から…
今は、ベット上で「寝たきり」になってしまった、Fさんの部屋の窓辺に、こぶりのクレマチスの花が咲いていた。幸田 露伴は、「 花のいろいろ」(青空文庫PDF)で、

鉄線蓮
てつせんは、詩にも歌にもわすれられて、物のもやうにのみ用ゐらるゝものなるが、詩歌に採らるべきおもむき無きものにはあらじ。籬などに纏ひつきつ、風車のようなる形して咲き出でたる花の色白く大なるが程よく紫ばみたる、位高く見えて静にかすかなるところある美はしきものなり。愛で悦ぶ人の少きにや、見ること稀なり。心得ず。

Fさん宅の窓際に咲いていたクレマチス

でる人の少なきを嘆く。「鉄線てつせん」とは、厳密には、別種の花らしいが、今ではクレマチスとして知られるようになった。日本原産の「カザグルマ」が世界の花と交配されて出来上がったものらしい。通常は、六枚ないし八枚の比較的大きな花弁が、一株に数個咲くが、小型の花を密集してつけるのもある。紫と白のクレマチスの鉢植えが、喫茶店の店先に飾ってあったが、いつの間にか片づけられてしまった。
以前は、Fさんもリハビリのため、クレマチスのある窓辺の手すりにつかまって、外を見ておられた。ちょっと筋力が弱って、そこまでいかないが、いつの日かまた、窓の外からも、花の横からFさんの顔が見えるようにと願っている。
花言葉は「精神的な美しさ、旅人の喜び」で、露伴の思いに似る。
以上、2005年4月22日記とあるが、Fさんはもう、いない。

オオヤマレンゲ探索行

梅雨の合間、オオヤマレンゲが見たくなり、弥山・八経ヶ岳へ出かけた。この方面へは、前回、2008年5月以来の山行である。
  • 7月1日(木)朝 8時20分自宅出発
  • 10時25分、奈良県吉野郡天川村行者還岳隧道に車を置く
  • 12時 0分、登り口を間違えたので、避難小屋を経てようやく隧道への降り口へ到着、昼食
  • ゆるい勾配の尾根道を経て、弥山へのややきつい道を登る
  • 13時55分、弥山到着、途中で足が少し痛くなったがまあまあのコースタイム。
  • 14時15分、八経ヶ岳への鞍部に、オオヤマレンゲ群生地あり、鹿の害から守るためにフェンスで囲ってある。その入り口、マイズルソウの群生を横目にして行くと、オオヤマレンゲの蕾が見られた。花の季節には少し早かったと後悔したが、少ないながら開花しているオオヤマレンゲにも出会い、ここまで来た甲斐があったと安堵する。モクレン科に属するオオヤマレンゲは、山の風景に溶け込んで、すいぶん清楚に見える。聞けば、天川村の「村の花」だそうだ。
  • 14時35分、八経ヶ岳到着、だんだんガスもかかり、視界は悪い。記念撮影を済ませただちに下山。
  • 17時40分、車のある行者還隧道入り口への直前に雨に会い、ずぶ濡れになりながら到着。
  • 19時50分、自宅着。
【補足】2010年7月18日付け「赤旗」山行ハイキング欄に要旨が掲載されました。

ゲバラの Tシャツで金剛山へ

Twitter(12) にも「囀り」ましたが、日曜日に、金剛山を登ってきました。当日は晴れて、すこし気温も高くなったので、キューバみやげに娘からもらった、チェ・ゲバラの T シャツを身につけてのお出かけです。
登山口にある駐車場は、休日のせいかかなりの車でした。そこから黒栂谷分岐からカトラ谷へ。しばらく登った所で、道の横からおりでくる女性陣に「クリンソウが咲いている」と教えていただきました。踏み跡の付いている谷をすこし登ると、やや開けた斜面に一面にはえているクリンソウの群落がありました。女性陣に出会わなかったら、見過ごす所でした。ラッキー!花の色は少し濃い目のピンク(というより薄紫でしょうか)、薄いピンク、そしてほとんど白色と様々でした。
また、もとの登山道に引き返し、急な勾配を登って山頂へ。昼食後は、冬には滝が凍ることのあるツツジオ谷を降りてきました。登山口にある民家の軒先には、射干《シャガ》の花が咲いていました。シャガは、学名は、Iris japonica といってアイリス(あやめ)の仲間なんですね。(韓流ドラマ・「アイリス」にヒロインがあやめを育てる場面がでてきましたね。ちょっと脱線!)まことに、花愛づる山行でした。
筍《たけのこ》に括《くく》り添えたりしやがの花 几菫

参考:


暗香枕に和す、合歓の花

木下杢太郎画「新編百花譜百選」

木下杢太郎「合歓の花」
去年は庭先に合歓の木があり、今頃には花をつけていましたが、今年はどうも枯れてしまったようです。そこで、江馬細香の合歓の花の漢詩と、木下杢太郎画「新編百花譜百選」より、1943年7月30日のスケッチを掲載しておきます。

 

 夏の夜
雨晴れて 庭の上には 竹そよぐ風多し
新しき月は眉の如く ほのかなる影は斜めなり
深夜 涼しきをむさぼりて 窓をおほはず
なやましき香 枕に和す 合歓めむの花

芭蕉の「象潟や雨に西施が合歓ねぶの花」でもそうですが、細香の詩からも、合歓という字には、やや艶かしい響きがあるようですね。また、決して明るい世情ではなかった時代に、杢太郎はどんな思いで合歓の花をスケッチしたのでしょうね。そんな事を思ってみました。


テーマ「Summer Flower」を作りました…

最初に、新潟中越沖地震では人的被害も含めて、大きな震災となりました。被災地の皆様には、心からお見舞申し上げます。

このところになり、梅雨が明けたのか、まだなのかはっきりしない天気です。暑いのは苦手なほうで、今くらいの気温だと、すごしやすいのですが、かといって「冷夏」になれば、地震に続く「天災」が、また心配になります。さて、このまちサイトに夏の花をあしらったテーマ「Summer Flower」を作りました。(左サイドの「このまちにじいろ」から Summer Flower を選択すれば、画面が変化します。)花の写真は、このブログ用などに、西成区内で撮ったものです。(一部自宅周辺のも含みます。)全体の色調をどうするか、迷いました。赤系統が強いと暑苦しいし、水色基調も夏にそぐわない気がしますし、結局、透明感を出して、「地肌」が直接見えるようにと苦肉の作となりました。どうか、暑さに向かう(だろう)折り、健康にも気をくばりながら、花の数々をお楽しみください。


汗に酔うビラまきの後の庭弄(いじ)り…

ムラサキシキブ先日の台風のせいではありませんが、庭には、のうせんがずらの花が散っていました。ビラ配りも終わったので、片付けついでに、萩や紫式部の枝を苅りかむことにしました。萩の花は秋の花と思っていましたが、当方ではもう咲き始めています。紫式部は、源氏物語の作者とは一応関係なく、「ムラサキシキミ」という名がなまったとか…(Wikipedia)花自体も、ほんの薄すらと紫がかっていますが、秋には真紫の実をつけることでしょう。(写真)


「こくちなし」ではすまされない ― 診療でのギャグ(その 23)

白と黄色のコクチナシの花先日、梔子くちなしを題材にした詩を紹介した折、コクチナシにも触れた。今日、往診に出かけた患家がある市営住宅の花壇に、そのコクチナシが咲いていた。八重の花弁で、白と黄色の花の色があるようだ。地面に這うように植わっているので、クチナシに比べれば、木の丈はずいぶんと低い。咲く花の密集度も違うのか、臭いもそんなにはきつくない。

と、ここまでは全く真実の話である。ここからは、幾ばくかのフィクションが混じる。

今日の往診では、前回が初診だったMさんに、検査の結果を説明した。

— そういうわけやから、これからも検査のたんびに、なんにも隠さずに言うからな。 — そうしてんか、頼みまっせ、せんせ。 — と、かけて「アパートの前の花の反対」と解くちゅうことやな。心は「コクチナシ」(告知こくちなし)やったらあかん。 — なんか、まわりくどーて、よお、分からん、ギャグやな、それを言うなら、年金は「こくちなし」ではすまされない、国民一人一人に、葉書で早よ~に、ちゃんと知らせえや、そのことをちゃんと言うた、日本共産党に今度はいれまっさ。

まわりくどいギャグという点では、M さんと、どっこいどっこいと思うが…