月別アーカイブ: 2005年12月

中井正一『土曜日』—1930年代、良心のブログ(その 2)

Happy New Year ! は、まだ少し早いが、ボツボツ医療生協機関紙 1月号の原稿を考えなければならないのだが、新年に限らず、この時候の挨拶がきわめて苦手である。たしか「徒然草」に、「かくて明けゆく空のけしき、昨日に変りたりとは見えねど、ひきかへめづらしき心地ぞする。」と元旦の朝を評した文をネットで探したが、後が続かない。一応、これも使うにしても、先日紹介した中井正一『土曜日』巻頭言の正月に書いた分を書き出して、材料にしよう。

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中井正一『土曜日』―1930年代、良心のブログ

 1930年代という戦前の暗い時代にも、「抵抗」の精神を貫いた思想家の一人に中井正一がいる。彼は、反軍国主義、反ファシズムの活動の輪を少しでも広げようとの意図で、『土曜日』という雑誌を発行し続けた。時の権力の弾圧の下、発行期間は一年半という短いものであったが、毎週書き綴った「巻頭言」を、今読んでみると彼の熱い思いが十分伝わってくる。Blog と称して、ここに拙い文を書き並べてはいるが、彼の、1930年代、良心のブログとも言うべき志の高さに及ぶべくもない事を恥じる次第である。ここは、彼と共同して『土曜日』の編集に当たった能勢克男氏が、1936年末に書いた時から 70年近くたっても色あせない、巻頭言そのままを紹介するのが相応しいかもしれない。

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ケーテ・コルヴィッツ展

戦前ドイツの女流版画家、彫刻家のケーテ・コルヴィッツの展覧会が、姫路であったので、休日を利用して、うっすらと雪の残る姫路城横の姫路市立美術館まで出かけた。コルヴィッツの事は、以前宮本百合子がその生涯をまとめた伝記を紹介したことがあるので、読んでいただきたい。

展覧会では、期待にたがわず多くの作品を感動を持って見ることができた。対象に向かって、版画では何度もためし刷りを重ねて、その過程の中で、対象への深い認識と、これでしか表現できない局面が見事に統一できていると感じた。

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加藤周一「三題噺」

ゲット価:250円
発行所:筑摩書房 1965年 7月10日初版

今年の夏の山登りの帰りがてら、信州上田まで足を伸ばしてきた。上田の診療所勤務だった大学時代の友人が不慮の事故で亡くなったのでお参りするためである。その時に、たしか加藤周一氏が終戦をはさんで、上田の医院で医者をしていたことを、自伝「羊の歌」にあったのを思い出した。

現代では、九条の会のメンバーの一人として、加藤周一氏は馴染み深い。さらには博識な評論家として印象がある。ほんの一部しか接していないが、その著作を読まなければ知りえぬ、先人が築き上げてきた日本文化の世界も体験できる。この著作でも、未知、ないしは、断片的にしか知りえなかった人物の生き様に触れることができる。

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一足先に「メリークリスマス」

いつもと同じような時の流れでも、年の瀬は何となくせわしく感じる。在宅患者さまへの投薬期間も、年末年始の休診をはさむので日ごろより長くなってしまう。昨日あたりから、往診に出かけると、次は来年にまた来ますよ、と言うと「よいお年を!」という返事が返ってくる。

今年は、昨年の誓いを、忘れぬように、在宅高齢者の方に、ささやかなプレゼントを用意しなくちゃ、と午前の外来が終わると、百均店に駆けつけた。今は、扱う品物も増えて、老眼鏡など老人向けのグッズも結構あるようだ。その中から、どびん敷き、めがねクリーナー、消臭剤、麻製のタオルなど選び、往診に出かけた。

「サンタはんは、子供相手に今は忙しゅうててんてこまいや。そやから、サンタの代理で、プレゼント持って来たで…」と言うと、「寝たきり」の方でも、こころなしか、笑みが浮かんでくる。

年末、年始、無事に過ごされますように、年明けには元気な笑顔をまた見せてください(^o^)/


レールモントフ「現代の英雄」

 高校時代、ベチョーリンというあだ名の友人がいた。その頃は、クレージーキャッツの全盛期で、谷啓の「ガチョーン」や「ベチョーン」(というのがあったのかは定かではないが(^O^))という擬音語からきているものと思っていた。ある日友人にその由来を尋ねたところ、「ゲロイナシェーボ ヴレーミィア」との返事。その頃は、とんとブンガクに縁がなく、ましてやロシア文学の比較的マイナーな作家(といえば、レールモントフに失礼か(^^ゞ)の小説の原題であろうなど知る由もない。後に読んでみて、主人公ベチョーリンのロマン的というか、ちょっとニヒルで、体制に反抗的なところに魅了され、その友人のニックネームへの憧れが分かる気がした。ブンガクを通じて、皆がことさらに背伸びをしようとしていたわが「青春」の一こまである。
 そんな事を思い出しながら、再読の機会があった。さすがに、ベチョーリンへの感情移入は、昔のようにいかないが、レールモントフの持つやさしさや繊細さが時代の閉塞的な状況で、ベチョーリンの屈折した仮面に托されていたと感じる。ご存知のように、レールモントフは、先輩プーシュキンの跡を追うように、フレームアップまがいの決闘で斃れた。時代を駆け抜け、遺していった彼のメッセージに、今も心をうつ事が多いと思う。

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筧久美子「李白」


角川ソフィア文庫—ビギナーズ・クラシックシリーズ
ゲット価:619円

最近ちょっと漢詩に凝っている。個性ある中国詩人の中でも、李白は好きな詩人の一人である。「南北漫遊、求仙訪道、登山臨水、飲酒賦詩」とは彼の人生を表す言葉らしいが、そんな生涯からの漢詩のエッセンスを伝えてくれる小冊子である。

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白石昌則「生協の白石さん」


SPAM(迷惑メール)の中に、最近は「生協の白石さん」との件名が目に付き始めた。フィルタを付けているので、めったに「迷惑メール」のフォルダを見る事はないが、件名を見たときには、仕事の上での連絡か、とつい開いてしまった。東京農工大学購買生協の白石さんの名は、それほど、ネット内では有名になり、本もベストセラーになっているそうだ。昨今のやや殺伐とした人間関係の中では、ちょっとしたメッセージでも、きちんと受け止める姿勢が、読んでみると「ほっこり」とさせるのであろう。

「愛は売っていないのですか…?」
「 どうやら、愛は非売品のようです。
もし、どこかで販売していたとしたら、それは何かの罠と思われます。
くれぐれもご注意下さい。」

そこで、わが医療生協の職員諸君に、あなたならどう答えるか聞いてみた。

F看護師:「は〜い、売っています。一口千円で、医療生協に加入なされば、愛が買えます。」
T事務:「ぼくも愛がほしい。どこで売っているのか、分かりましたら教えて!」
S事務:レセプトコンピュータのキーボードを叩き、
「たしかに、当診の患者さまには、愛さまは、下は 1才、最高 88才の方まで、3人おられます。しかし、個人情報保護の建前から、住所、電話番号、好きな男性のタイプなどお教えすることは出来ません、あしからず御了承下さい。」

などなど…

私ならどう答えるだろうか?

「はい、当医療生協は、は直接扱ってはおりません。でも健康や若さを保つ事ならご相談に乗ることができます。元気な体と若い気持ちあってこそのと申せます。また、医療生協に加入していただいて、班会などに出たり、ボランティアで診療所のデイケアに参加していただくと、があるかもしれませんので、ご検討下さい。」

うーん、ちょっと月並み、説明的?さりげなく答えるのもなかなか難しい(^^;)

ネットでは、今日もブームの導火線となった、Blog 「がんばれ、生協の白石さん!」は生協盛況のようである。


いま、地球の子どもたちは—2015年への伝言

〈3〉よごれた水をのむ子どもたち(保健・医療)


妻が、教材用にと注文した「いま、地球の子どもたちは—2015年への伝言」が届いた。うち、第 3巻の保健・医療編のページを広げてみた。以前、世界の軍事費のうち、たった 10秒間の経費を浮かせば、アフリカの子供たちに、はしかワクチンを接種する費用がまかなえると聞いたことがある。それから、20年くらい経って、途上国のワクチン事情はどうなったのだろうか?その当時、ワクチン接種率は、世界全体で、12.5%、現在では、80% に達したとこの本で触れている。しかし、同時に、ワクチン接種の地域格差は広がり、三種混合(ジフテリア、破傷風、百日咳)ワクチンは、初回三回+追加一回の接種が原則であるが、三回目がうけられない子供は、世界で、3,400万人(サハラ以南のアフリカで、1,160万人、南アジアで、1,390万人など)にのぼるとの事である。その他、はしか、ポリオ、結核は予防接種効果が高いのだが、そうした恩恵にあずかる機会は、途上国では、依然として少なく、子供の命をおびやかす病気である。また、HIV 感染(エイズ)は、いまや 15歳から 49歳の年齢層では死亡原因のトップであり、小児期の感染のみならず、親や家族を亡くしたエイズ孤児が、2010年には、2,500万人をこえ、新たな貧困問題となっている。マラリアや不衛生な水事情から来る下痢症など、先輩の小児科医からの「子供の病気のほとんどは栄養失調やった」との伝聞は、この地球の大きな部分を占める地域では、昔話ではすまない。過去に引き起こした、いや現に引き起こしてもいる、枯葉剤、地雷、劣化ウランなどの戦争の犠牲は、結局、子供たちに重くのしかかる。

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中野孝次「風の良寛」


定価:570円

何気なく、嚢中という言葉で連想していくと、良寛の漢詩を思いついた。そして、ひと頃話題になった「清貧の思想」の著者、中野孝次氏(2004年没)に良寛をテーマにした著作があるのも思い出した。(「清貧の思想」にも良寛の項目が立てられている。)

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