はしかは忘れた頃にやってくる!

写真は、はしか(麻疹)ウィルスの電子顕微鏡写真英語版 ウィキペディアより】

関東方面だけと思っていた「はしか(麻疹)」の流行は関西にも広がりつつあります。今後の流行の進展に十分注意をする必要がありそうです。

以前、小児科医にとって、はしかは外来で「ありふれた」病気でした。「熱を見れば、はしかと思え!」と先輩医師からも叩き込まれたものです。近年、はしかが激減し、ほっとしていましたが、今度の流行を見ていると、「何々は忘れた頃に云々」という言葉を思い浮かぶとともに、その様相が少し違う気がします。

小児科医が、はしかの診断で目の色を変えるのは、はしかでの重症の合併症を警戒するからです。当方が、まだ当直経験も浅い研修医時代、その当直勤務のある夜のこと、けいれんが止まらない 1才くらいの子どもが運び込まれてきました。聞けば、数日前のはしかの高熱も、やっと微熱程度になってきたとのこと。治りかけにみられるように、皮膚の発疹も黒ずんできています。しかし、けいれんに影響され、呼吸、心拍も微弱です。一人ではとうてい対処できないので、先輩の M医師にきてもらい、二人で、救急蘇生に努めましたが、その子はふたたび元気な姿を見せてはくれませんでした。臨床的には「麻疹後脳炎」と診断できる病態です。医者として、その後もこうした場面に立ち会うことはありましたが、最初の経験だった故に痛恨の思いが今も残っています。

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別の重症例では、はしかの極期に、両肺が真っ白になったレントゲン写真を見たことがあります。呼吸困難がひどかったので、気管に直接、管を入れ、人工呼吸をしながら、救急車で感染症センターに搬送しました。はしかによる「間質性肺炎」との診断で、何日間かは、人工呼吸器を使いましたが、なんとか一命は取り留めたと聞いています。

はしか予防接種(麻疹単独ワクチン)の接種が確立してまだ数年だったので、接種率も低く、こうした重症例を含むはしかを多く診たのでしょう。接種率の向上で、だんだん、それもここ十年くらいで、小児科医にとっても「忘れ去られた病気」になってきましたが、実は、昨年までの麻疹ワクチンの幼児期一回接種法で、懸念されたことがあります。それは、ワクチンの効果が思春期~成人まで保つことができるのか、という事です。その懸念を払拭するためには、2006年4月より、幼児前期と後期の二回接種が実現され、世界の趨勢にようやく追いつきました。しかし、今回の流行を見ていると、現行ワクチン以前の、子どもたち、ひいては思春期以後の成人では、はしかを予防できる抗体が不十分だと推測されます。

何度も言われていることですが、はしかそのものに効く薬はありません。ワクチンによる予防が唯一の手だてです。西成医療生協は、適応年齢における麻疹・風疹混合ワクチンとともに、一回しか麻疹ワクチン(麻疹、風疹、おたふく混合の MMR ワクチンを含む)を受けていない子どもや成人にも麻疹単独ワクチン接種を勧めています。どうか、ご自身がかからないためにも、そして、抗体のできていない子どもから二度と不幸な重症例を出さないためにも、予防注射をうけてください。くわしい要綱は、このまちサイト「はしかの流行にご注意を!」をご覧ください。

【参考】 家でこうしてあげて はしか(麻疹)について


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