爺は歳八十、眼に霧なし…

日本ペンクラブのサイトに、電子文藝館という、小説やエッセーが載っているページがあります。なにげなく、ながめていたら、次のような漢詩が目につきました。(詠う季節が、ちょっとチグハグなのはご容赦ください。)

 冬夜    冬夜とうや

爺繙欧蘭書  ちちひもとく 欧蘭おうらんの書
児読唐宋句  は読む 唐宋の句
分此一灯光  此の一灯の光を分かちて
源流各自泝  源流 各々 みづかさかのぼ
爺読不知休  爺は読みて むことを知らず
児倦思栗芋  みて 栗芋りつうを思ふ
堪愧精神不及爺  づるにふ 精神 爺に及ばず
爺歳八十眼無霧  爺は歳八十 眼に霧なし

 一九世紀のはじめ頃、美濃の一隅で、一つのランプの光を分けあって、それぞれの勉学にはげむ父と娘。疲れて、ふとおやつがほしくなる娘、しかし、一向に疲れを知らぬ父の姿に畏敬の念を感じて恥じる。

電子文藝館:門玲子「江戸女流文学に魅せられて」

細香描く竹図江馬細香という江戸時代の女流詩人の作です。彼女の父親は、岐阜大垣藩の蘭方医で、長命であったようですが、感心するのは、齢八十になっても、(当時の)最新の医学の勉学を欠かさなかったことです。「源流 各々 みづかさかのぼ」って、父親の曇りなき眼でみていたのは、何だったんでしょうね。老いてなお、先進医学の導入という使命に賭ける静かな情熱、医という職業に対する確固たるエートスとそれを包み込む親子の心の交流を感じます。当方も、いつまでも「眼に霧なし」といきたいと思ってはいるのですが…

江馬細香については、以前、南條範夫:細香日記という記事を書きましたので、ご覧ください。写真は、細香が描く竹の図です。詩とともに、絵も生業としていました。

 


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