3月28日の診察室

*民医連近畿地協主催「被ばく対策学習交流会」に参加。特別報告は、全日本民医連原発事故被曝対策本部長の小西恭司先生の「双葉町の甲状腺エコーの取り組みと被ばく対策本部の今後の課題」(写真)。昨日のブログでの”Reasonable doubt”(合理性のある疑問)の重要性を改めて認識した次第。特に発言を準備していなかったが、福島の経験を求められ、少しドギマギ…

「被ばく対策学習交流会」

「被ばく対策学習交流会」

*今日のメディア逍遥

上記民医連ついでに、3月4日、18日の全日本「民医連新聞」に、当方の駄文が2回にわたって連載された。忘備録として、そのテキストも掲載。



(上)

もう医者としての生涯の半分以上を、この大阪・西成でおくったことになります。人生を振り返る習慣は持ち合わせてはいませんが、この原稿の依頼があったのも、何かの巡り合わせかもしれません。少し古い日記や、最近になって Facebookやブログに書いたものを再編成して、投稿に代えます。[注記は、あくまで現在からのそれです]

【一九九三年某月某日】

ドイツの哲学者だったかが、人間、四〇代以降になると、ふと人生の深淵を経験し、そこでは、日頃考えられないような〝使い込み〟などの悪事に手を染めると言っている。もちろん、当方〝指弾〟されるようなことはしていないが、考えようによっては、これも〝転機〟なのだろう、明日からは、ひたすら〝研修〟の身である。
五年いつとせにあまし得たるは、何の名ぞ、夢半ばにして小児科を去る[注:杜牧(中国の詩人)の詩「十年一たび覚む、揚州の夢、あまし得たるは青楼薄倖の名(妓楼でのプレイボーイの評判)」をもじって]

【一九九五年某月某日】

先日、大阪民医連のNさんに案内してもらった西成の街。どこか、戦災にあわなかった故郷京都に似て懐かしい、診療所での第一日。

【一九九六年某月某日】

患家に隣接した家から「ラジオの音が昼夜聞こえる」との通報。立ち会ってもらい、玄関のちゃっちい鍵を蹴破る。なかには、家の住人が斃れていた。死後、一日は経過しているか?

【二〇〇一年某月某日】

「あいりん地区」のドヤ街で、入口に眼光鋭いお兄さんが立っている。内心ビビって横を通ると、当方の白衣を見て、「往診ですか?どうもご苦労様です」と丁寧な挨拶。室内には、排泄物の溜まった牛乳パックが林立、診察のために、倒れないように抜き足差し足。
もう一軒、旧飛田遊郭街へ、玄関先の座敷に、着飾ったお姉さんが座っている。まだまだ〝現役〟なんだ! Deep Osaka を実感。[注:たぶんアパート内で「賭場」を開いていたのでしょう。映画「おとうと」のロケ地です。飛田には、大正ロマン香る遊郭そのままの料亭があります。]

(下)
【二〇〇九年九月某日】

今日は、病児保育施設の開設式典。以前、全国保育合研で、経験もないのに分科会の世話人を引き受けたことがあったが、それ以来の責任をやっと果たし「老後」の楽しみが一つ増えた。そのために努力を重ねてきたとは言い難いが、決して短くはない三十数年の歳月は、仲間たちの熱意と努力の実現には十分な時間だったのだろう。

【二〇一二年三月某日】

エベレスト眺望の旅から帰還して最初の日曜日。「総合医療」を目指す医者の講演会を聞く。共通する到達点も多少はあるが、自分の歩んできた道とはかけ離れている気もする。頂上へのルートは数多くあるが、決して一つのルートだけが山の全貌ではあるまい。

【二〇一二年一二月二六日】

支援に入ったW病院での今年最後の診療。亜急性甲状腺炎と思われる例など、多彩。福島は雪模様。阿武隈川の鉄橋を渡る時のうっすら雪化粧の山々が印象的。

【二〇一三年二月一三日】

病児保育は静かな一日。そこでインフルエンザ検査前の替え歌を作る。「ゴンベさんの赤ちゃんが風邪ひいた、ゴンベさんの赤ちゃんが熱出した、ゴンベさんの赤ちゃんが咳もする、そこであわてて検査した」で、鼻に綿棒を入れる。

【二〇一三年二月一四日】

保険医協会理事会。住吉市民病院を存続し、西成区でも安心して小児医療が続けられるよう訴えた。M保育所の健診、年長組は今日が最後。よく病気をしてベソをかいていた子も「オレなぁ」と、今ではいっぱしの口。園児を見ていると、今まで診た子らの姿が走馬灯のように浮かぶ。尿路感染から急性腎不全になり、小さなおなかで腹膜灌流をしたYちゃん、未熟児で生まれ幾度も呼吸困難を乗り越えたM君…。当方が治したというより、自ら治ってくれたのだろう。彼らの生命の輝きの一コマ一コマに立ち会えただけでも、医者としての望外の喜びだと思っている。

【終わりに】

これからも、平凡ですがドラマティックでもある診療所の日々を書き続けます。良かったら、ブログをご覧ください。Facebookなどで、皆さんもぜひ発信してください。

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