先日、少し用事ができたので堺の御陵前まででかけた。以前は阪堺線が恵美須町まで通っていたので、天下茶屋まで乗り換えなしでずいぶん楽だった。その気で乗ってみたら、今は天王寺駅前までで、どっかで乗り換えなければならない。乗換駅がもひとつ判明せず、結局「我孫子前」とわかったのが何回か路面電車を乗り降りした後でずいぶん時間がかかってしまった。おかげで、昼間の電車だったので空いており、また待ち時間の間にゆっくり読書にふけることができた。読んだ本は、「コースト・オブ・ユートピア」の主人公ゲルツェンの伝記・E.H.カーの「浪漫的亡命者」の最初の数章。
ゲルツェンは、1847年にロシアを出国して以来、ふたたび祖国の地を踏むことがなかった。そんなドイツ、イタリアへの旅立ちの日から伝記は始まる。彼は、ロシア貴族の私生児の出自で、ともに同じ境遇だった従姉妹のナターリアと結婚した。のちに友人ゲオルク・ヘルヴェークとの不倫に悩むことになる。などなど、なかなか興味ふかい。と章がすこし進んだところで、最近阪堺線に導入された「トラム」が目の前を通り過ぎた。なんだか時空を超えて不思議な感じがした。同時に、「トラム」のなかで、「コースト・オブ・ユートピア」などの芝居ができたらというとんでもない妄想も浮かんできた。