中野孝次「風の良寛」


定価:570円

何気なく、嚢中という言葉で連想していくと、良寛の漢詩を思いついた。そして、ひと頃話題になった「清貧の思想」の著者、中野孝次氏(2004年没)に良寛をテーマにした著作があるのも思い出した。(「清貧の思想」にも良寛の項目が立てられている。)

生涯 身を立つるにものう
騰々とうとうとして 天真てんしんに任す
嚢中のうちゅう 三升の米
炉辺ろへん 一束いっそくまき
誰か問わん 迷悟めいごあと
何ぞ知らん 名利みょうりちり
夜雨 草庵そうあんうち
双脚そうきゃく 等間とうかんに伸ばす

ここでは、文字通り、袋の中という意味だが、転じて嚢は財布を指し、「嚢中銭なし」と言えば、ふところが空っぽと言う意味になると「言海」にあった。ちょっと道草をして、良寛の漢詩集を散見したが、どれも平明淡泊な詩であり、その詩を生んだ良寛の生き様や人柄を示すエピソードを中野孝次氏は示している。こうした良寛のスタンスは、「物質的な繁栄」を誇ってきた戦後日本へのコントラカルチャーになるという主張は、「清貧の思想」と同じようなテーマである。しかし、こうした「過去回帰」はバブル崩壊後も受け入れられずにいるし、今のライフスタイルを「何もかも捨てなさい=放下せよ」では、若干の説教臭さも感じてしまう。まあ、その事はさておき、

つきてみよひふみよいむなここのとをとうとをさめてまたはじまるを

などの良寛の和歌にも心惹かれるものがあることは確かである。


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