加藤周一「三題噺」

ゲット価:250円
発行所:筑摩書房 1965年 7月10日初版

今年の夏の山登りの帰りがてら、信州上田まで足を伸ばしてきた。上田の診療所勤務だった大学時代の友人が不慮の事故で亡くなったのでお参りするためである。その時に、たしか加藤周一氏が終戦をはさんで、上田の医院で医者をしていたことを、自伝「羊の歌」にあったのを思い出した。

現代では、九条の会のメンバーの一人として、加藤周一氏は馴染み深い。さらには博識な評論家として印象がある。ほんの一部しか接していないが、その著作を読まなければ知りえぬ、先人が築き上げてきた日本文化の世界も体験できる。この著作でも、未知、ないしは、断片的にしか知りえなかった人物の生き様に触れることができる。

「三題噺」とは、客席からのリクエストに応じての落語の題のようであるが、江戸時代初期、京都詩仙堂に住んだ石川丈山を扱う「詩仙堂志」と室町時代、頓智で名高い一休禅師を、その晩年に交渉のあった森女がわから描く「狂雲森春雨」と大阪(大坂)の儒者富永仲基の関わりのあった人々の「証言」からなる「仲基後語」の三篇である。各々に、自らの人生に「こだわり」を持って生きていた。石川丈山は、日常的人生、一休は森女との官能的人生、富永仲基は、知的人生。その「こだわり」の中で、石川丈山では、自分の中の他者、一休では、彼が愛した森女、富永仲基は、親族や大坂奉行所の役人、ひいては同時代の異端の思想家、安藤昌益まで他者との「かかわり」まで描写は広がり、彼らの「こだわり」がいっそう鮮明になってゆく、そんな知的な好奇心を呼び起こしてくれる本である。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>