一海 知義:陸游・中国詩人選集

老いてなお別れた妻の面影が…

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河上肇が獄中でその漢詩と親しんだ陸游(1125-1209)には、二つの挫折の経験があったと、一海知義氏は指摘します。一つは、時の権力者の息子と科挙の試験の合否を争い、敗れた事。その事が後の彼の政治的立場をきわめて困難なものにしましたが、志の高い彼の詩の源になったのでしょう。もう一つは、最初の結婚した妻を心ならずも離縁した事です。実母が嫁をこころよく思わなかったとされています。封建的な当時の中国社会では、親の命令は絶対的なものだったのでしょう。別れて後、ある庭園で、陸游はその人と再会します。その時は、もうお互いに再婚した身、彼女は人を介して陸游に酒肴を届け、彼は建物の壁に一編の詩をしたためました。その後まもなく彼女は他界するので、この時が今生の別れとなったのです。陸游、三十一才の春の事でした。その後も、このエピソードが忘れられず、老年になっても幾首かの詩を書いています。紹介する「沈園」という絶句もその一つです。河上肇は「陸放翁詩鑑賞」という注釈を遺していますが、そのうち、青空文庫には、「放翁鑑賞 06 その六 ――放翁絶句十三首和訳(つけたり、雑詩七首)――」「放翁鑑賞 07 その七 ――放翁詩話三十章――」が公開されています。うち、「その六」では、放翁などの絶句に彼の和訳をつけていますので、それに見習って、拙訳など試してみましょう(^^ゞ。

沈園しんえん 二首其の一

城上じょうよう斜陽しゃよう画角がかくかな
沈園しんえん旧池台きゅうちだいあら
傷心しょうしん橋下きょうか春波しゅんぱみどりなり
かつ驚鴻きょうこうかげてらきた

街角に夕陽差し込み哀しく流れるモーツアルトピアノコンチェルト
傷心ハートブレイクの身にはもとより昔に戻ることはない。
春の足音、水の流れ、橋の下に聞くおりしも、
飛び立つかりがねのみ君をしのぶよすがか?

其の二

ゆめたれこうえて四十年しじゅうねん
沈園しんえんやなぎいて綿わたかず
くゆく稽山けいざんつちらんも
遺緃いしょうとむらいてひとたび泫然げんぜんたり

君の香、君の思い出、
老いた身には、淡くよみがえるのみ。
いつか土塊つちくれとなって故郷の山に埋もれるとも、
断たれた半生の夢は、なみだとなって地を湿るおす。

Mozart:ピアノ協奏曲第23番イ長調 K.488第2楽章Haskil:パウル・ザッハー指揮 ウィーン交響楽団1954年10月録音)は、Blue Sky Label サイト提供です。iTune や Windows Media Player などで、バックグラウンドミュージックとしてお聞きください。


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