「人は子どもというものを知らない。子どもについて間違った観念を持っているので、議論を進めれば進めるほど迷路に入り込む。この上なく賢明な人々でさえ、おとなが知らなければならないことに熱中して、子どもには何が学べるかを考えない。彼らは子供の内に大人を求め、おとなになる前に子どもがどういうものであるかを考えない。」
今野一雄訳「エミール」
熱っぽくルソーを語ってくれた秋葉英則先生をふと思い出した。
ダウランド「涙のパヴァーヌ」
イヤホンをかけながらのジョッギングを続けていますが、さすがにこの曲を聴いた時には足が止まり、聞き惚れてしまいました。
続・こんなご時世だからこそ(1)
カール・マルクス先生、「フランスにおける階級闘争」にて曰く
およそこのバローという人間ーブルジョア自由主義の化身で18年間を通じて彼の精神のいやしむべき空虚さを、そのからだのもったいぶった態度のしたにかくしてきたこの人間ーの犯さなかったような変節行為はなかったのだ。
ローレンス・スターン「トリストラム・シャンディの生活と意見」(1巻11章)からの借用らしい。ともあれどっかの国の首相と似ていなくもない。もっとも18年間も彼に付き合わされるのはご免であるが…
久しぶりの小児心エコー
護持院原の敵討
森鴎外「護持院原の敵討」(青空文庫図書カード)は封建社会の非人間性を淡々と告発した佳品であるが、後に起こった仇討ち(天保九年(1828)〜弘化三年(1846))と混同されることが多い。後の事件は、松本清張の「天保図録」と吉村昭「敵討」に詳しい。(若干両氏にはニュアンスの違いがあるが…)

図は吉村昭「敵討」(新潮文庫)
和辻哲郎「日本精神史研究」
柄になく、和辻哲郎の「日本精神史研究」なる本を読んだ。
本体というより、加藤周一の解説を読みたかったからだ。加藤周一の「日本文学史序説」には直接には、和辻哲郎への言及はない。政治思想的には反対の極に立つ和辻をどう評価するのか、少し興味がある。解説の最後に、加藤周一は書く。
『日本精神史研究』の改訂が、時代の変化、すなわち「大正デモクラシー」の自由主義から超国家主義的風潮への知的雰囲気の推移を反映していることを指摘し、それにもかかわらず改訂『日本精神史研究』の本文が、大すじにおいて見事な「作品」であり、それを見事な「作品」として成り立たせたのが。著者の意思と能力ばかりではなく、また二十年代日本の時代であったことを指摘すれば足りる。私は二・二六事件以後の日本政府にも、その日本政府の立場に近づいた和辻の著作にも賛成しない。しかし今日読みかえしてみて、『日本精神史研究」を愉しむのである。
機会あれば、その「大正デモクラシー」が「大政翼賛」へ傾斜していったのか?和辻のみならず、もうすこし人物をひろげて観てみたいと思う。
追加として加藤周一のことばをもう少し引いておく・
話を民主主義の問題にかえせば、私は戦争から戦後にかけての大衆の意識の上に、自発的な前進、したがってもとへは戻りようのない変化があるといった。しかしその大衆は、おそらく「万葉集」の時代から一貫して発展してきた精神的構造によって支えられているのであり、まさにその意味で日本の大衆なのである。大衆の中にある持続的なものとは、その精神的構造に他ならない。どういう民主主義ができるか、またそれがどこまで発展するかということは、長い見通しとしてそのことにかかわってくるだろう。
「日本人とは何か」現代日本の文明史的位置
結果的には「大正デモクラシー」を実質化できなかった和辻の立ち位置との対極がそこにはある。
こんなご時世だから(63)
大阪民医連からの依頼原稿
「戦争法と医療」など大きなテーマで書くのはあまり得手ではない。そこで、 今までの諸兄のご投稿と趣きを変えて、敗戦直後に、B級戦犯として処 刑され た木村久夫氏のことを紹介する。
氏のことを知ったのは偶然のことであった。戦没学生の手記を集めた「きけわ だつみのこえ」という文集の掉尾に、ある人物の白眉の遺書があること は知っ ていた。そのことが、ほくせつ医療生協の機関紙での「歴史散歩」という連載記 事に取り上げられ、遺書の筆者が氏だと知ったのは、日本共産党 大阪府委員会 に勤務する高校の後輩Nさんからの知らせであった。そして実に氏は私の豊中高 校 (当時は中学、昭和11年卒業)の先輩にあたる。一時は、金沢第四高等学校 志望とあるから実現していたら二重の意味で先輩である。
京大経済学部に入学した氏は、学業半ばにして、出征、インド洋に浮かぶカー ニコバル島に配属され、通訳業務にあたったが、終戦直前の住民虐殺に 連座 し、上官の罪をかぶる形で連合国側により絞首刑に処せられた。その獄中で田辺 元「哲学概論」の余白に書かれたのが、その遺書である。
一昨年、東京新聞などで「わだつみ」に収録分以外にもう一通別の遺書があっ たと報じられた。そこにはさらに鋭い当時の軍部批判 が書かれていた。(余談 になるが、東京新聞は木村氏の恩師・塩尻公明氏が遺書を改ざんしたと断じてい るが、中谷彪氏は、木村氏の父が、戦後のGHQの検閲 を考慮した結果と言 う。私は中谷説の方が説得力があると思う。)
「彼(軍人)が常々大言壮語して止まなかった忠義、犠牲的精神、其の他の美学 麗句も、身に装ふ着物以外の何者でもなく、終戦に依り着物を取り除か れた彼 等の肌は実に耐え得ないものであった。此の軍人を代表するものとして東條前首 相がある。更に彼の 終戦に於て自殺(未遂)は何たる事か。無責任なる事甚だ しい。之が日本軍人の凡てであるのだ。」
歴史に仮定が許されるはずはない。でも氏の示した学問の力を支えにして、歴 史的事実を起こした原因の深い洞察と、現在の私たちに課せられた課題 に真剣 に向き合うことが氏が遺したものだと思えてならない。「戦争法」の実質化がな されようとされる昨今、そのことを強く噛みしめたい。 写真は、木村久夫氏の 高知高校時代の肖像と「哲学概論」の余白に綴られた遺書である。
(以上、ほくせつ医療生協の機関紙への投稿を加筆・訂正した。)
NHK「まいにちロシア語」第36課(12月23日)から
1ヶ月の総復習
*今日の会話
Ваня: Та́ня, В твое́й ко́мнате есть телеви́зор?
Твня: Да, сто́ит большо́й япо́нский телеви́зор. Я купи́ла его в ма́е.
Ваня: Когда́ ты смо́тришь телеви́зор?
Твня: Я всегда́ смотрю́ телеви́зор, когда́ у́жинаю. Позавчера́ я смотре́ла интере́сную програ́мму о киноику́сстве. Ты смотре́л?
Ваня: Позавчера́ был понеде́льник, да? Я о́чень хоте́л посмотре́ть, но я це́лый день рабо́тал. Та́ня, а где продаю́т такой большо́й телеви́зор?
Твня: В большо́м универма́ге.
【会話補足】
・твой 「君の」の女性前置格 большо́й 「大きい」の男性前置格
・стои́т 立っている=ある
・「いつ」の когда́ と「〜のとき」の когда́
・хоте́ть 「〜したい」 の過去形 посмотре́ть ≒ смотре́ть 「見る」
・продава́ть 売る -овать 動詞
*今日の単語
купи́ть 買う у́жинвть 夕食を取る позавчера́ おととい програ́мма 番組 киноику́сство 映画 продава́ть 売る универма́г デパート тра́нспорт 乗り物、交通手段
*閑話休題
チェーホフ(Чехов)4大劇の紹介、最後は「三人姉妹」(Три сестры)。他の劇に比べて、男女の愛憎関係が複雑 笑。軍医のチェブトゥイキン(Чебутыкин)曰く。
「(不機嫌に)どいつもこいつも、鬼にさらわれちまえ、くたばってしまえ。……おれが医者だから、どんな病気でも癒せると思ってやがる。ところがおれは、全然なんにも知っちゃいない。知ってたことは、みんな忘れた。なんにも覚えちゃいない、きれいさっぱりさ。…」(神西清訳)
身につまされる台詞 笑。青空文庫には、入力中でまだ公開されていない。
NHK「まいにちロシア語」第35課(12月22日)から
今回は、第1変化と第2変化と少し違う動詞を学びます。
どうしてそんなに早く寝るの?
*今日の会話
Таня: Ва́ня, почему́ ты ложи́шься спать так ра́но?
Ваня: Потому́ что я всегда́ встаю́ о́чень ра́но?
Таня: Что ты де́лаешь ра́но у́тром?
Ваня: Я живу́ на мо́ре и ка́ждое у́тро фотографи́рую у́треннее со́лнце, а пото́м пишу́ стихи́.
【補足】
ложи́ться спать 就寝する、床につく ра́но у́тром 朝早く ка́ждое у́тро 毎朝 у́треннее со́лнце 朝日(発音は со́нце)
*今日の文法
1)-авать 動詞−訳、不定詞、я、 ты、 он、 мы、 вы、 они́、 男性/中性過去形、女性過去形の順
起きる встава́ть встаю́ встаёшь встаёт встаём встаёте встаю́т встава́л встава́ла
・-ава- が -а- に変わる
・語尾に常にアクセント
・過去形は規則通り
2)-овать 動詞-訳、不定詞、я、 ты、 он、 мы、 вы、 они́ の順
写真を撮る фотографи́ровать фотографи́рю фотографи́руешь фотографи́рует фотографи́руем фотографи́рете фотографи́руют
3)二つの不規則変化動詞
暮す、生きる жи́ть живу́ живёшь живёт живём живёте живу́т
書く писа́ть пишу́ пи́шешь пи́шем пи́шете пи́шут
*今日のプラスα
Почему́? なぜ Почему́ ты не рабо́таешь? なぜ働かないの?
Потому́ что 〜 なぜならば Потому́ что я не хочу́ рабо́тать. なぜなら働きたきないんだ。
*今日の単語
так そんなに ра́но 早くに пото́м その後 встава́ть 起きる поздно 遅くに фотографи́ровать 写真を撮る рисова́ть 絵を描く жить 暮す、生きる писа́ть 書く
*閑話休題
チェーホフ(Чехов)最後の戯曲「桜の園」(Вишнёвый сад)なんだか、チェーホフがもう描き切ったという感じの芝居です。モスクワ芸術劇場の上演です。
神西清訳の青空文庫では → http://www.aozora.gr.jp/cards/001155/card43598.html